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小児眼科/お子さんの目の病気

近視

近視は「遠くが見えにくくなる状態」のことです。身近な例で言うと、学校の黒板の文字がぼやけて見えたり、遠くにいる友達の顔がはっきり分からないことがあります。しかし、近くの本やタブレットの画面は問題なく見えるのが特徴です。

目は「カメラ」に例えることができます。目のレンズにあたる部分(角膜や水晶体)を通った光は、網膜という「フィルム」にピントが合わなければなりません。しかし近視の場合、目が奥行き方向に伸びてしまうことで、ピントが網膜の手前で合ってしまいます。その結果、遠くのものがぼやけて見えるようになるのです。

お子さんの目の健康は、生活習慣と早めの対策で守ることができます。日々の生活の中で気になる仕草が見られたら、早めに眼科で検査を受けましょう。

近視の症状・受診の目安

  •  テレビや黒板を見ようとして、目を細めたり顔を前に近づける。
  • 遠くを見るときに目を細める仕草が増える。
  • 「目が疲れた」と訴えることがある。
  • 頻繁に目をこする。

近視が進行するとどうなる?

近視は多くの場合、小学校高学年から中学生頃に進行しやすく、視力がどんどん悪くなることがあります。進行性近視が高度になると、大人になってから網膜剥離や緑内障といった合併症のリスクが高まる可能性があります。

近視を完全に治すことはできませんが、進行を抑える治療や生活習慣の改善で、大人になってからのリスクを軽減することが可能です。お子さんの「よく見える」という当たり前の生活を、私たちと一緒に守っていきましょう。

近視の原因

一つは遺伝があげられます。親が近視の場合、お子さんも近視になりやすい傾向があります。また、近年はスマートフォンやタブレットなどを近い距離で長時間使用することで近視になる子が増えています。また、屋外での活動が少なく、室内で過ごす時間が長いことも原因の一つです。

近視の治療と予防方法

近視は完全には治せませんが、進行を抑えたり、視力を補正したりする方法があります。

視力の補正

  • 眼鏡
    →安全で使いやすい方法です。お子さんの視力に合った眼鏡を処方します。
  • コンタクトレンズ
    → 高学年以降であればコンタクトレンズも選択肢です。

近視の進行を抑える治療

低濃度アトロピン点眼

低濃度アトロピン点眼は、近視の進行を抑える目的で使用される点眼薬です。アトロピンはもともと目の治療に使われてきた薬ですが、近視の進行抑制に効果があることがわかり、低濃度に調整して使用します。当院では、0.01%製剤を処方しています。

毎晩点眼することで、近視の進行を50%ほど抑えられるとされています。副作用が少なく、安全性が高い治療です。

生活習慣の見直し

  • 屋外活動を増やす
    →日光を浴びることで近視の進行が抑えられると言われています。1日1~2時間の外遊びが効果的です。
  • 画面を見る時間を減らす
    →スマートフォンやタブレットはできるだけ距離を取り、長時間の使用を避けましょう。
  • 読書や勉強の環境を整える
    →照明が十分な明るさであること、読書や勉強中にこまめに休憩を取ることが大切です。

斜視

斜視とは、片方の目が正しく物を見ている方向に対して、もう片方の目が異なる方向を向いている状態です。例えば、片目が正面を見ているときに、もう片方の目が内側や外側、あるいは上下にずれていることがあります。 斜視は見た目に分かりやすいこともありますが、軽度の場合は親御さんが気づきにくいこともある病気です。ですが、早めに気づき治療を始めることで、お子さんの視力や両目を使った立体視機能を守ることができます。

目を動かす筋肉は6本ずつあり、それらが協調して働くことで両目が同じ方向を向きます。斜視の場合、この筋肉のバランスが崩れる、もしくは脳が目の使い方をうまくコントロールできていないために、片方の目がずれてしまいます。目の見え方だけでなく、お子さんの将来の視力や日常生活に大きな影響を与える病気です。

斜視は、早期発見・早期治療が大切な病気です。治療は長期間かかることがありますが、お子さんと一緒に取り組むことで、治療効果を高められます。治療を通じて、視力を発達させ、見た目の改善を図ることができます。

お子さんの視力の成長を一緒にサポートしていきましょう。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

斜視の種類

斜視にはいくつかのタイプがあります。具体的には以下のようなものです。

内斜視(ないしゃし)

片方の目が内側(鼻側)を向いてしまう状態。 生後6ヶ月頃から現れる先天性内斜視や、遠視が原因で発症する調節性内斜視があります。

外斜視(がいしゃし)

片方の目が外側(耳側)を向く状態。 特に疲れたときやぼんやりしているときに見られやすいです。

上下斜視(じょうげしゃし)

片方の目が上下どちらかにずれる状態。 頭を傾けたりする姿勢が見られることがあります。

斜視の症状

斜視は見た目の問題だけでなく、目の使い方に影響を与える病気です。以下のような症状が見られることがあります。

  • ものが二重に見える(幼い子どもでは自覚が難しい場合もあります)。
  • 片方の目が寄っている、または外れている。
  • 頭を傾ける癖がある(上下斜視の場合)。
  • 視力が片方だけ悪い(斜視による弱視が原因のこともあります)。
  • 集中すると片目が寄る(調節性内斜視など)。

注意すべきサイン

  • 赤ちゃんや幼児の写真で片目がずれていることが多い。
  • 頭を傾けたり、片方の目をつぶって物を見る仕草がある。

乳幼児健診や3歳児健診では斜視が見つかることがあります。これらの健診を必ず受け、気になる点があれば斜視の時のお子さんの写真などを用意して早めに眼科を受診してください。 

斜視を放置することのリスク

斜視をそのままにしておくと、次のような問題が起きる可能性があります。

弱視(じゃくし)の発症

脳が「斜視の目で見た像」を無視するようになるため、片目の視力が十分に発達しないことがあります。

両眼視機能の欠如

両目で物を見る能力(立体感や奥行きを感じる力)が育たない場合があります。

見た目の影響

見た目の問題が気になることで、子どもの自己肯定感に影響を与えることもあります。

斜視の治療法

治療法の選択は、斜視の種類や程度、患者さんの年齢などによって異なります。早期発見・早期治療が重要で、特に子どもの場合は視力発達に影響するため、できるだけ早く専門医の診断を受けることが大切です。

斜視の主な治療法には以下のようなものがあります。
手術が必要と思われる場合は専門病院に紹介いたします。

手術療法

斜視の程度が強い場合や、眼球の位置が動きにくい場合に行われます。

  • 眼球を動かす筋肉の位置を調整
  • 筋肉の長さを調節
  • アンバランスな筋肉のバランスを整える

手術は複数回必要になることもあります。先天性の内斜視など、早期の手術が必要なケースもあります。

眼鏡・コンタクトレンズによる矯正

遠視が原因の調節性内斜視などでは、適切な度数の眼鏡やコンタクトレンズを装用することで改善が見込めます。

斜視訓練・プリズム眼鏡

両眼で見る機能を獲得するための訓練を行います。また複視がある場合はプリズム眼鏡を装用して症状を改善させることがあります。

ボツリヌス毒素注射

眼の筋肉にごく少量のボツリヌス毒素を注射し、一時的に斜視を改善させる方法です。ただし、効果は数か月程度で、繰り返し注射が必要になります。

弱視

弱視(じゃくし)とは、眼鏡やコンタクトレンズで視力を矯正しても十分な視力が得られない状態を指します。特に、視力が発達する乳幼児期から6歳ごろまでの間に、片方または両方の目が適切に使われなかった場合に起こります。視力が十分に発達しないために、放置すると生涯にわたって影響が残ることがあります。

 子どもの視力は6歳までに発達するため、この時期に適切な治療を始めることで改善の可能性が高まります。乳幼児健診や学校検診での異常を見逃さないようにしましょう。特に家庭でも注意深く観察をすることが大切です。弱視は見た目にはわかりにくいことが多いですが、以下のようなサインに注意してください。

  • 片目だけ視力が悪い
    →子ども自身は両目を使って見るため、片方の目が弱視であっても気づきにくいことがあります。
  • 物を見るときに目を細める
    →遠くを見る際に目を細めたり、顔を傾けることがあります。
  • 動作がぎこちない
    →視力の低下により、物にぶつかりやすい、運動が苦手といったことがあります。
  • 視力検査で左右差がある
    →学校や幼稚園の視力検査で「片目だけ視力が低い」と指摘されることがあります。

弱視は放置すると大人になってから改善が難しくなることがあります。お子さんが両目でしっかり物を見られるようにするためには、親御さんと専門医が一緒に取り組むことが大切です。お子さんの視力を守るために、早めの診断と治療を始めましょう。

弱視が起こる原因

目そのものに大きな異常がない場合でも、以下のような理由で発生します。

斜視弱視(しゃしじゃくし):
斜視があると、ずれている方の目で見た映像が脳にとって不快なものになるため、脳がその目の情報を無視してしまいます。その結果、その目の視力が発達しません。

屈折異常弱視(くっせついじょうじゃくし):
遠視や乱視など、目のピント調節に問題がある場合、物の見え方がぼやけてしまい、視力が発達しにくくなります。特に片方だけに強い屈折異常がある場合、弱視の原因となります。

形態覚遮断弱視(けいたいかくしゃだんじゃくし):
先天性白内障や眼瞼下垂など、目に入る光や映像が遮断されることで起こります。たとえば、赤ちゃんの時期に片目がふさがれていると、その目の視力が育たないことがあります。

弱視の治療法

弱視の治療は、視力が発達する6~8歳頃までが鍵です。早期に治療を始めることで、視力の改善が期待できます。

眼鏡による矯正

屈折異常が原因の場合、適切な度数の眼鏡をかけることで視力の発達を助けます。眼鏡をかけ続けることで、弱視が改善することもあります。

アイパッチ療法

健常な目(健眼)にアイパッチを貼り、一時的に隠します。これにより、弱視の目を意識的に使わせて視力を鍛えます。
例: 一日2~6時間程度、弱視の程度に応じて行います。 子どもが嫌がることもありますが、遊びや学習を通じて楽しく続ける工夫が大切です。

視覚トレーニング

弱視用のトレーニングプログラムや、視覚刺激を使った治療を行います。専門の医療機関で実施されることが多いです。

外科手術(必要な場合のみ)

先天性白内障や眼瞼下垂など、光が目に届かない状態が原因の場合は、外科手術で問題を解消した上で治療を進めます。

はやり目

はやり目(流行性角結膜炎)は、アデノウイルスというウイルスが原因で起こる、非常に感染力の強い目の病気です。はやり目は感染力が強いため、周りに広げないことが非常に重要です。特に、幼稚園や保育園、小学校などで流行しやすく、家族間でも感染が広がることが多いです。

はやり目は症状が出始めてから完全に治るまでには、2~3週間かかることがあります。角膜の炎症が重い場合は、さらに長引くこともあります。 

はやり目の症状

  • 目が赤くなる(充血)
  • 目やにが多く出る
  • 涙が止まらない
  • かゆみや違和感
  • 視界がぼやける

など、これらの症状が見られた場合、はやり目を疑います。

はやり目は片目から始まり、数日後にもう片方の目にも症状が現れることが一般的です。白目が真っ赤になり、はっきりと目立ちます。 また、黄色や白っぽい目やにが大量に出ることがあります。さらに、ウイルスによる炎症で涙が多く分泌されて涙が止まらなくなります。

まぶたの裏が腫れることで、目がゴロゴロする感じが出ます。 角膜(黒目部分)にも炎症が及ぶと、一時的に視力が落ちることがあります。

はやり目は見た目が赤く腫れるため、親御さんも心配になるかと思います。しかし、正しい治療を行い、感染予防を徹底することで安心して過ごすことができます。 「目が赤い」「目やにが多い」といった症状が見られたら、早めに眼科を受診してください。そして、他のお子さんやご家族に感染が広がらないよう、予防をしっかり行いましょう。

はやり目の感染経路

はやり目は、目や手を介して簡単に感染します。以下のような状況でウイルスが広がることが多いです。

  • 目やにや涙に触れる
    →お子さんが目をこすった手で触れたドアノブやおもちゃを介して、他の人にウイルスが移ることがあります。
  • タオルやハンカチの共有
    →同じタオルを使うと、ウイルスが家族間で感染することが多いです。
  • 公共の場での接触
    →幼稚園や学校など、子どもが集まる場所で一人が感染すると広がりやすくなります。

はやり目の治療法

はやり目には特効薬がありませんが、次のような方法で症状を和らげます。

  1. 冷やす
    →冷たいタオルやアイパッドを目に当てることで、かゆみや腫れを抑えます。
  2. 点眼薬
    →抗炎症薬や抗菌薬の点眼を行い、炎症を抑えたり、細菌による二次感染を予防します。
  3. 安静にする
    →目を使いすぎると疲れが増すため、テレビやスマートフォンなどを控え、ゆっくり休むようにしましょう。

はやり目の予防対策

  1. 手洗いを徹底する
    →お子さんだけでなく、家族全員が石鹸でこまめに手を洗うようにします。
  2. タオルやハンカチを共有しない
    →お子さん専用のタオルを用意し、家族間での接触を避けます。
  3. 目を触らないようにする
    →目をこすることでウイルスが手に付着し、周囲に広がりやすくなります。お子さんに目をこすらないよう声をかけてください。
  4. 登園・登校を控える
    →医師が「感染の恐れがなくなった」と診断するまで、登園や登校は控えましょう。通常は症状が出始めてから2週間程度が目安です。

お子さんが快適に過ごせるよう、一緒にサポートしていきます。何か気になることがあればいつでもご相談ください。